センター長あいさつ

ことばに何をこめるか,それをどう伝えるか

外国語教育センター長
教育担当副学長 坂本 一光 (さかもと いっこう)

いつの日のことだか,人は,獲物を見つけたことや敵が来たことなどを,ことばで知らせることができるようになった。しかし,ことばで人が伝えたのは,それにとどまらなかった。ことばは,遠い過去から未来まで,身の丈から宇宙の果てまで,はるかに時空を超えた。ことばは,個別具体の世界から普遍抽象の世界まで表現した。

ことばは世界を表現した。ことばがなければ,世界は無に等しいだろう。人は,自分という世界でさえも,自分で自覚することはないだろう。

この地球上には,民族や部族という人の集団の数だけの異なることばがあるという。ことばは人がつくる文化の根本をなすから,母語であると外国語であるとを問わず,人がことばを習う本質は人への理解である。人はどんな世界に生きてきたか,生きているか,そして生きようとしているか。

おまえは何ものであるかと自らに問い,それを伝えることによって,人ははじめて他者と関わることができる。他者との交流は,いつでも自らへの問いかけと重なる。ことばの運用能力は一つの術,スキルに過ぎないけれども,このスキルが担うことができる世界は広大で深い。ことばをみがきながら,人は,いつの日にか,語るべき思想とそれを伝えるべき術を獲得する。だから,いま志を掲げ,高い外国語運用能力を身につけようとする者たちにも,やがて,自らの思想を自らのことばで語る日が来るに違いないと信じることができる。

外国語教育センターが踏みだした歩みを,島根大学に学ぶ学生諸君の未来への歩みに重ねたいと思う。