千世のドイツ有機農業の旅
とにかく海外へ行きたい!!と思った私は2年間ドイツで農業の旅をしてきました。限られた予算の中、2年間で使えるお金は20万。その中で自分が納得できる旅とは?  どのような方法があるのか? 全く言葉が通じない中でしたが、たくさんのドイツのおじちゃん、おばちゃん、子供たちに支えられ生活をしてきました。少し紹介させていただきます。



三浦千世 (みうら かずよ)
島根大学 生物資源科学部
農業生産学科 (2002年入学)


ドイツへ行った動機

私は高校入学時から農業学科を選択。「自然にやさしい農」「持続的な農」とは何なのか興味を持ち、大学は農業生産学科に入った。

しかし、結局のところ家は農家ではないので、農業生産の現場はいまいち分かっていなかった。農家というものがどういったものかイメージを持てず、自分で農業をしたいとも思っていなかった。しかし前々から「農家」という「農業という仕事」と「家庭」がリンクした生活空間と生活文化には大変興味があった。休学理由にもあげたように、農業の専門技術や知識よりも、農業という仕事を含んだ生活全体と自然環境に関わる人々の意識・生き方に興味がある。

ドイツに行こうと思ったきっかけは、WWOOF(ウーフ)との出会いにある。就職活動も始まり、自分の進路に悩んでいた三年生の時、ある島根県の農家さんからWWOOFの存在を知った。ホームページを見てWWOOFの活動を知り、その活動内容には自分の思っていたことができる自由さと多くの可能性があることを感じ、その機関を利用してドイツに行こうと決心した(三年生の10月頃)。

前々から海外での長期の生活に挑戦してみたいと思っていた私は、どのようにすれば安く、しかも単に生活し語学を学ぶだけではなく、その国の生活自体に溶け込めるか、その方法を模索していた。青年海外協力隊の申し込みも考え準備を進めてみたが、その動機はボランティア活動に対する信念などではなく、海外生活に対する憧れに過ぎないと父にすぐに見破られ反対された(本当にその気があるなら現場にまず行って、そこから自分ができることは何か考えろという答えだった。それは確かに納得した)。

ドイツという国を選んだは、環境に配慮した生活様式に興味があったこと、また前々から授業やニュースで
聞いていたような、環境問題に関わる法律や政策などを肌で感じたいてみたいという憧れが強かったからだ。ドイツへ行くことによって、将来的に自分が農業生産とどう関わっていきたいのか、どのような進路を歩んでいきたいのか、見出せるのではないかと強く感じていた。

WWOOF
「Willing Workers On Organic Farm(有機農業で働きたい人達)」の略で、国内外のボランティアとして働くことを支援する会員制組織。仕組みは、働き手(ウーファー)が受け入れ先(ホスト)で働く代わりに、食事と宿を提供してもらうというもの。従来の住み込みアルバイトとは違い、ウーファーとホストの間には雇用契約がなく、金銭的なやりとりはない。両者ともにWWOOFに会員登録し、労働力と寝食を交換する。WWOOFは全世界規模の組織で1971年にイギリスで発足。現在では世界20カ国以上に事務局があり、50カ国以上で活動が広がっている。日本では1994年に立ち上がり、2002年に本格的な活動が開始された。


ドイツでの生活
出国2005年10月3日 ~ 帰国2007年8月24日(約1年11ヶ月)


1, Das Gänsehaus Wilhelmina und Bernhard Polski Saarburg (2005/10/03-11/01)

仕事内容:鶏の餌用ジャガイモ蒸かす作業、りんごの収穫と洗浄りんごジュースり、除草作業、定植作業


Bernhard と Wilhelmina

私にとって最初の農家だけに、毎日緊張と文化の違いからの戸惑い、歴史的な風景に感動の毎日でした。ドイツ語に関しては自分で少しは勉強していましたが、当初全く理解できず、ほぼゼロからのスタートでした。聞いていても語学は上達しないので、とにかく口を動かすことを心がけました。何を言われても最初理解できないものの、質問されたり話しかけられた時は聞き取れた単語一つでも繰り返ししゃべりました。「一輪車とってきて」といわれれば私が「一輪車とってきて」と繰り返すので、当初は奇妙な光景だったと思います。Wilhelmina がそんな私に毎日のように簡単なドイツ語を質問してくれ、分からない単語や重要な単語を紙に書き出して教えてくれました。



2. Arche Noah Palatina Erlebnisbauernhof Sonja und Gerhard Kissel Oberalben (2005/11/01-12/06)


3. Bannmühle Hans Pfeffer Odernheim (2005/12/6-2006/01/16)

仕事内容:農家の店の整理・ラベル貼り、りんごの支柱付けともぐら駆除、室内の塗装

肉牛約25頭・果樹園(りんご・ぶどう)



畜舎の中の様子


屠殺作業の様子


バター作り


4. Family Schmitt Weitersweiler (2006/01/16-04/06)

仕事内容:牛・鶏の畜舎の掃除、子牛の世話、野菜の収穫・調整作業、チーズ・牛乳・ヨーグルト等の加工作業の補助

牛11頭・子牛・豚・鶏・やぎ・うさぎ・犬・猫畑・果樹 (33ha)



畜舎の外の様子


常に生物の誕生と死が繰り返されていました。





5. Odins Mühle Sylvia Morgenstern und Friedrich Sauerwein Bornich (2006/04/16-5月末)

仕事内容:鶏・馬・ロバの飼育 ハーブの庭、野菜畑の管理 家事全般


Sylvia と Friedrich





収穫した野菜の出荷作業



6. Liane und Roman Wirth Pleisweiler (2006年6月)

仕事内容:野菜の除草作業・収穫作業(イチゴ、アスパラ、パセリ、レタス、ラデッシュ等)、野菜・パン・チーズを市場に出す出荷作業






忙しい中でも、しっかり趣味を持ち・陶芸・編み物などを楽しみにして生活している Liane には感心しました。

手作りの花壇や家のあちらこちらに素敵な手作りの雑貨が飾られていました



野菜温室の中で作業中


7. Hof Vorberg D.Glashoff Verbert (2006年7-8月)


畜舎の中



ドイツに行ったことで学んだこと、気付いたこと、そして今後の自分の課題




ドイツの農家に行き、多くの人と出会い助けてもらい生活をしてきました。また、ドイツ人だけでなくポルトガル、ロシア、イタリア、中国、モンゴル、タイ
など他国の人たちと交流する機会もありました。その生活の中で日々感じたことは、自分が日本人であることです。全く当たり前かもしれませんが、自分が日本の文化について分かっていないことが多すぎて恥ずかしい思いをすることも多々ありました。自分たちの宗教観とは? 和服とは? おせちとは? 日本のお祭りとは? 日本文化に対する疑問と同時に関心も高まりました。日本に帰ったら、自分が好む日本ならではの文化を少しずつ勉強して身に着けたいと決心しました。


キッチンやリビングには食器や小物・鏡が自由に楽しく飾られていました。


また自分が都会育ちであるせいか、日本のせかせかした生活スタイルと時の流れ方が違うことを感じました(仕事や学校から帰ってきてただ寝てしまうだけの生活とは何か違います)。ドイツで生活していた頃、家族一人一人が自分自身の生活を大事にし、そして楽しんでいることを感じました(例えば、好きな家具や物に対してのこだわり、友人との談話の時間、訪ねて来た近所の人に自家製のお菓子を振舞う時間、物を作る時間、物を大切に思う気持ち、好きな本を読む時間など)。農家の仕事はドイツでも大変忙しかったのですが、その中でもゆったりとした時間があり、のびのびと生活していました。




ドイツに来て一年が過ぎ、仕事やドイツ語にも少しずつ慣れてきた頃、日本で有機農業をやりたいと心に決めました。その地での生活が大変気持ち良く、健康的で、自分にその仕事がふさわしいと感じたからだと思います。今後は農業の担い手になるために有機農業に従事していきたいと思っています。また、自分が目指す農業と生活スタイル(文化)を見出していきたいと思っています(卒業後の進路は農水省認定機関NPO法人熊本県有機農業研究会に内定が決まっています。そちらで、国が定めている有機農業・有機農産物とはどういったものか、JAS認定員の補佐として業務し、勉強させてもらいます。合わせて有機農業の研修に従事しながら、ゆっくりと新規就農を目指していく予定です)。


地下室には自家製のマーマレードや野菜を煮詰めたコンポートが貯蔵されていました。


ドイツ滞在期間中に身をもって感じたのは、言葉が全く話せなかったり、人間関係があやふやな時は、話をするよりも態度に出して行動するしかないということです。そうすることで自分の意思が相手に伝わり、信用が生まれてくるのだと思います。ですがよく言われてしまいました。「Wenn du willst, dann tu das, wie du willst! (したいならしたらいい。そう自分が好きなように)」 「Mach es doch gleich! (すぐにしたら!)」




私が難しい顔をしていたら、そう言って「人生はそう簡単なんだから」と言われます。本当に簡単そうに話します。そんな姿を目の当たりにしていると、本当に意外と簡単なのかもしれないという気にさえなってきます。重要なのは自分自身のRecht(正しさ)にあることに気付かされました。