公開日 2026年05月26日
英語が苦手だった島大生、国際協力の最前線へ
~島大OB梶谷翔さんが語る、外国語学習と海外でのキャリア~
お話を聞かせてくれたのは、島根大学法文学部卒業生の梶谷翔さん。
2013年島根大学を卒業後、商社に勤務し、北京駐在を経験。 退職後、イギリスのブラッドフォード大学大学院へ進学。 大学院修了後、日本のNGOで勤務、ウガンダへ。 その後、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)モザンビーク事務所勤務。 2026年6月からアメリカの国連本部日本政府代表部での勤務が始まる。
梶谷さんが国際的なキャリアを志すようになった背景には、学生時代の出会いがあったという。
大学時代に国連で活躍する瀬谷ルミ子さんの存在を知り、「自分も国際的な現場で働きたい」と 考えるようになったことがキャリアの原点になっている。
世界各地で働いてきた梶谷さんに語学学習との向き合い方や、
海外経験が自身に与えた影響について話をうかがった。

「英語が得意だったわけではない」
これまで中国駐在やウガンダ、モザンビークで国際協力の仕事に携わり、
6月からはニューヨークの国連本部日本政府代表部での勤務も決まっている梶谷さん。
そんな華やかな経歴から、もともと英語が得意だったと思われることも多いという。
しかし、大学入学時のTOEICの点数は、高くはなかった。
「言語文化学科の中でもかなり低かったと思います。」 そう振り返る。
大学時代は英語に加え、中国語、スペイン語、フランス語など複数の言語を学習。
さらに社会人になってからも、仕事や赴任先に応じて多くの言語を学び続けてきた。
「語学に“目処”なんてない」
梶谷さんが語学学習を本格的に始めるきっかけとなったのは、叔父さんからのある一言だった。
「学生時代、英語がもっとできるようになってから中国語をやろうかなと話したとき、 “ 語学に目処なんてないんだから、さっさと始めればいいじゃん”って言われたんです。」
その言葉をきっかけに、複数の言語を同時に学ぶようになったという。
一方で、「やりすぎました。」と笑いながら振り返る。
特にスペイン語とポルトガル語のような近い言語を同時に学んだときは、
頭の中で混ざってしまうことも多かったとのこと。
中国語学習経験が“北京駐在”につながった
大学卒業後、商社に入社。
貿易に携わる中で、中国語学習がキャリアにつながった。
「中国語を勉強していることを上司が知り、 “中国でビジネスをやりたいんじゃないか”と推薦してくれたんです。」
その後、北京駐在を経験。
「話そうとする姿勢が信頼につながる」
梶谷さんは、中国で働いていた当時を振り返り、 「現地の言葉でコミュニケーションを取ろうとすることが大切だった。」と語る。
「この一緒に写真に写っているのは現地工場の社長さんです。ちょうど父親世代くらいの方でした。 中国語が流暢ではなくても、『ニーハオ』と声をかけるだけで、少しずつ心を開いてくれる感覚がありました。」
その経験は、後にモザンビークで働いた際にも活かされたという。
現地では英語だけでも仕事はできる環境だった。
しかし梶谷さんは、現地で話されているポルトガル語の勉強を始めた。
「英語だけで過ごす人もいる中で、ポルトガル語を勉強していたことで、
『梶谷は現地に馴染もうとしている』と受け取ってもらえた感覚がありました。」
言葉を学ぶことは、単なるスキルの習得ではない。
相手の言語を学ぼうとする姿勢が、信頼関係につながっていく。
そんな実感を海外での経験を通して得たという。
「語学学習は筋トレに近い」
現在も英語学習を続けている梶谷さん。
海外の大学院や国連での仕事では、ネイティブスピーカーとの議論に苦労したこともあった。
「今でも苦労しています。でも、やっぱり続けることが大事なんです。」
語学学習について、梶谷さんは“筋トレ”に例える。
「筋肉がつきにくい人、つきやすい人がいるように、英語が伸びやすい人、伸びにくい人がいると思います。 でも、時間をかければかけるほど上手くなっていく。」
その中で特に重要だと語ったのが、“毎日少しでも続けること”だった。
「おすすめは“朝5分”から」
具体的な学習法についても教えてもらった。
特におすすめとして挙げられたのが、
NHKラジオ講座
BBCニュースのポッドキャスト
瞬間英作文トレーニング など。
さらに、
「携帯を遠ざける。」
「起きた瞬間に勉強する。」
「1日5分だけでもやる。」といった、習慣化の工夫も。
「0か100じゃなくて、1でもいい。5分でもやったことに意味があると思っています。」
島大生へのメッセージ 「目標がなくてもいい」
最後に、「学生時代を振り返り、今の学生たちに伝えたいこと」を尋ねると、
梶谷さんは「今の自分が学生時代に戻っても、きっと同じような大学生活を送ると思う。」と語った。
「英語を勉強したり、海外に行ったり、いろんな人と遊んだり。 たぶん同じように大学生活を楽しむと思います。」
そのうえで、学生たちには「まずはいろいろな経験をしてみてほしい」とエールを送る。
「短期間でもいいので、ぜひ海外に行ってみてほしい。
海外に行くと、初めて自分が“外国人”になる経験をするんです。」
言葉が通じない。文化も違う。
そうした環境に身を置くことで、視野が大きく広がるという。
「島根大学には、いろんな経験ができるチャンスがあると思います。」 「自分も、英語が得意だったわけではないですし、いろんな縁や経験がつながって今があります。」
また、将来の目標が定まっていないことに不安を感じる必要はないとも話す。
「目標があるならもちろん良いですし、もし今なくても、自分の興味があることに取り組めばいいと思います。 社会に出て3年、4年経つと考え方も変わりますし、その時にまた方向を見直していけばいい。 最初から完璧に決めなくても大丈夫です。」
語学学習もキャリアも、一歩ずつ積み重ねながら、自分なりに修正していけばいい。
「できるかどうか」ではなく、「やってみること」が、世界への扉を開く最初の一歩なのかもしれない。


